「めずらしいおきゃくさんだねぇ」
そう言って姿を現したのは、黒い服を着た女性だった。
「いらっしゃい」
女性の足元には、あの猫がいる。
「あの、私…」
「デルタのあとを追ってきたんだろう。お入り。」
そう言って、女性は私を小さな家の中へ招き入れた。
進められるがまま、木製の椅子に座るとさっきの猫がふわりと私の膝にとびのってきた。
「デルタ、って言うんですか、この子?」
「顔のところが三角の模様になっているだろう。いわゆるハチワレという模様なんだけどね、だからギリシア文字のデルタ(Δ)とつけたのさ」
なるほど、たしかに猫の顔の白い部分が三角になっていて、目や耳の部分だけ黒い模様になっている。
「不思議なものだね、名前をつけるとそこにひとつの個性が生まれる」
「…個性?」
「あんただってそうだろう?」
何もかも見透かしたような女性の瞳。
