あなたが私にキスをした。


「そうだ、まだ僕の名前も教えていなかったね。僕はトキワ。一応、彫刻家だ。」

「…トキワ」

彼女は嬉しそうに、僕の名前を口にした。

「そうだな…君にも名前が必要だ」

僕の言葉に、彼女は不思議そうに首をかしげた。

いつまでも彼女を、レイカの代わりとして扱うわけにはいかない。

たとえ彼女が元は僕の作品であったとしても、今はもう命を持った一人の少女。

だから、彼女には名前がいる。



「…トーコ」



ふと、思い浮かんだ名前だった。



透子。

なにもかも澄み切ったような、一点のにごりもない彼女にぴったりの名前だ。



僕がその名を口にした途端、彼女の瞳がキラリと輝いた。

そして満面の笑みで何度も何度も、うなずいてくれた。

よかった、気に入ってくれたのか。

無邪気な彼女がとても可愛くて、僕も思わず笑みがこぼれた。