あなたが私にキスをした。


「おそいよぉ、おそすぎるよ、トーコちゃん!!!」


そう言って高笑いするイオリの姿は狂気に満ちていて、ゾッとした。



「あなた、一体なにを…!?」

「なにって、見ればわかるでしょう?燃やしてあげたんだよ、全部ぜーんぶ!だって、あいつが悪いんだ、アイツが、ボクのほしいものをぜんぶ、もっていくから…っ。だから、だからボクも、うばってやるんだ…!!」



そう言って、イオリは膝から崩れ落ち、そのまま大声をあげて泣きじゃくっていた。

才能を求め続けた、哀れな彫刻家の姿だった。



アトリエの炎が、家にまで燃え広がっている。

このままでは、本当になにもかも燃えてしまう…。



その時、クローゼットの奥に大切にしまわれた、銀色の箱が私の頭をよぎった。

エンゲージリングと二人の写真は、トキワとレイカさんをつなぐ愛の証だ。




あれだけは、なんとかして守りたい…!