「葵ちゃん?おーい…」

「あ、ごめんね心!ちょっとぼーっとしてて…」

「大丈夫だよ。暑いもんねー。ちょっと休憩しようか。」

私がぼーっとしていたのは、ここまでの成り行きを思い出していたのと、後東京での嫌な思い出を思い出していたのだ。

嫌な思い出とは、1年前のことである……

     *       *

「なんでよ!?なんでいつもあんただけ…?」

「ちょっと可愛くてモテるからって、調子のんなよクズが。」

私はいじめを受けていた。

何故か…それは、全部あいつのせいだ。

あの、裏切り者のせい…。

     *       *

「湧人君だって、きっとあんたのことなんて好きじゃないと思ってるのよ!!」

勝手に言わないでほしい…。

いじめっ子達は、叫びながら私を蹴ってくる…いや、痛いし、服汚れるんですけど。

こうなっている理由は簡単。さっきから文句を言ってきている女達曰く、湧人…私の彼氏はモテているらしい。

それで、あいつから告ってきたのに生意気だの釣り合わないだの…

本当にウザい。そんなに文句言うなら奪いにくればいいのに…

「染沢さんだって、あんたがむかついてあまりにも離れないから、転校したんでしょ?!」

…それは違う。自分に自信がある訳じゃないけど。

心はあの日、確かに私に言った。

「ごめんね。私が元々いじめられてたのに…葵ちゃんを巻き込んじゃって…でも、私もう転校するから…じゃあね。葵ちゃん…」

―親友だと思ってた。大好きだよ。

その一言は、私がいままで言われてきたどんな言葉よりも嬉しくて…。

心なら信じてもいいって思ったんだ。

でも…私は心を引き止めることが出来なかった。

そのまま心は、埼玉の学校に転校してしまった。

…私も行こう。心のいる学校。

その日の放課後、私は湧人を呼び出した。