――あ、なんかこの感じ…知ってる。

きっとこれは夢の中なのだろう。

目を開けると………此処は、何処?

私がいたのは、海の中だった。

上の方に光は見えるものの、その光は微かで、自分の手もうっすらとしか見えない状態だった。

来たことがあるはずもない深海。

でも私は、どこか懐かしく感じた。

下を向いてみると、そこに魚や珊瑚の姿はなく、ただただ薄暗い闇の中に岩があるだけだった。

岩は、みるみるうちに幅が狭くなっていき、とうとう人が二人入るか入らないかというぐらいまで狭くなった。

周りには岩と闇しかない。

普段の私なら、怖くて逃げ出そうとするだろう。

でも、まず深海の中ということもあって出ることは出来ないだろう。

そして…何故か、この先に行かなくては行けないような気がしたのだ。

岩の中を、ずっとずっと潜っていく。

だんだん体の力が抜けていくのが分かる。

そして、突然辺りは光に包まれた…。

目を開けるとそこには…。

………私……?

こちらを見て微かに微笑む、私がいた。

私は、私に問いかける。

「…貴女は何故、変わってしまったの?」

変わった…?私が…?

何の話…?

「私は変わってなんかないわ…。ずっとずっと、誰かに愛されていたいから人に好かれるように…人を愛しながら生きてきた…。」

そう…私は人から愛されていないと寂しくて生きていけないような人間なのだ。

「やっぱり変わった…私は、今の貴女よりも強いもの…。人から愛されていなくったって…私は幸せだった。貴女みたいに偽りの愛なんて必要なかったわ…!」

偽りの…愛…?

「偽りの愛って何よ?!人から愛されたら私も愛していなくちゃ意味ないじゃない!!それに、私は前の彼氏…浩太も愛していたわ。だからこそ、別れたいって言われたときに迷惑をかけたくないから別れたの…。」

「それは違う…!それは、貴女がただ都合の良いように言っているだけ…。実際、その程度だったってことでしょう…?」

私は私にそう吐き捨てた。

「違う…違う違う違う違う違う!!!!!私は…もうあの頃には戻れないの…!無邪気に笑っていられたあの頃に…戻りたくったって戻れないの…!」

私は泣きながらこう叫ぶことしか出来ない。

「落ち着いて…。私と貴女が入れ替わればいいのよ…。私はもう大丈夫…人に裏切られたって傷つかないわ。だから…心を閉ざさないで…!」

「それは駄目…。今貴女と入れ替わったら、私は…柚愛は、壊れちゃうの…!!元の柚愛に戻ったら、みんなに愛されるように柚愛が作り上げてきた仮面が壊れちゃうの…!!!!」

もう限界だと思った。もう半分元の私に戻ってきてしまっているのだから。

「心を閉ざしちゃ駄目…!!ねぇ…私は心配しなくていいの!私のせいで、貴女はとても傷ついた…。もういいの…。貴女の役目は終わったのよ…!!」

私は私に必死に叫ぶ。

「やめて…私は戻る気なんてない…私を作ったのは貴女でしょう…!!早く、早く私から出て行ってよおおおおおおおおおおおお」