でも、もし言ってしまったら。

どうなるんだろう。

陸はきっとショック受けるよね。

「なんで…俺じゃ、夏来が辛いのを軽くしてあげることは出来ないのか?」

軽く…陸に言ったら私は軽くなるかもしれない。…でも。

陸は辛くなっちゃうでしょ?

「出来る…かもしれない。っでも!陸が……陸が辛くなっちゃうから。…陸が我慢する位なら、私が一人で抱え込んだほうがまだマシだよ…!!」

そういうと、また涙が溢れてきた。

「俺は夏来の辛い顔みたくないんだよ…俺だって少しくらい我慢できる。」

「――――って言っても?」

「え?」

「1ヵ月後に私が死ぬって言っても?」

陸は昔から私のことを心配してくれて、いつも解決策をかんがえてくれて…。

解決しなくても、私は陸に話すだけで楽だった。

…でも、今回は解決策なんてない。

話すだけでも、陸が辛い思いをする。

「そう…なのか?」

でも私は言ってしまったんだ。

「うん…」

ホオズキになるって決めたのに。

「嘘だろ?」

陸を困らせてしまった。

「ごめん…本当。」

いつもいつも馬鹿だなあ…私。

「なんで…」

え…?

陸に抱きしめられるのは一瞬で。

「なんで一人で抱え込んでたんだよ。…辛かったんだろ?夏来は一人じゃないんだから…一人で抱え込むなって…。」

一言。

たった一言だけたったけど、今まで自分で自分にかけてきた色んな慰めの言葉よりも、ずっとずっと楽になって気がする。

涙のせいで前が見えないけど、この瞬間何かが口に触れた気がした。


「なあ…俺たち、やり直そうぜ。それで、1ヶ月なんかよりももっと多く生きてやるんだ。」

「うん…!」

私はこの時、寂しいはずなのに何故かちょっと嬉しかった。




――嫌いになりかけてたこの世界が、またちょっと変わって見えた。