『未来への選択』
会議室は張り詰めた空気で支配されていた。何故なら今、この場で人類の存亡をかけた話し合いがされていたからである。
「これは自然界の怒りといっていいだろう。我々は自然界という神に試されているのだ」
この発言に全ての者が反論できずに首肯する。それだけ人類は追い詰められていた。
百年前、人類はある問題を前にした。自然エネルギーの枯渇問題である。しかし、人類は自然エネルギーを無尽蔵に使い続けた。新エネルギーに移行すると決めていたからだ。
結果、自然エネルギーは地球上から消えた。代わりに新エネルギーが使用されはじめたのだが、その十年後、新たな問題が発生した。第一に気象の異常である。
北極、南極の氷が解け、各国の気候が一変した。都市部が砂漠なみの気温になり、砂漠が巨大な湖となった。熱帯地域が凍りつき、寒冷地域で熱帯魚が確認されるようになった。その気候や気象が維持され続けるなら、まだ生物も環境に適応できただろう。しかし、一年も経たずに気候が急変する地域もみられた。
「この異常気象の原因は自然破壊と研究者たちは口を揃えて言っていますからな。このままでは、まずは環境適応できない生物が死に、植物も育たなくなるでしょう。そして、最終的には人類は飢餓に喘ぎ、滅亡してしまう。各国がGDPを犠牲にして改善にのり出すしかないでしょうな」
各国代表者たちの話し合いの結果、むやみにエネルギーを消費する行為が禁止された。そして、人類はエネルギーに頼らない生活を余儀なくされたのである。
そこで第二の問題が発生した。エネルギーに頼りきった先進国の反発である。しかし、これは重い経済制裁というかたちで抑えられた。
人類滅亡の危機のなかでは勝手は許されない。全人類に重責が課せられた。
情報伝達、流通も最小限に抑えられ、人々の生活は古き時代の生活のように一変したのだ。そのため、今の時代では忘れ去られた、こんな会話がされるようになった。
「お米がなくなっちゃったの。いただいてもいいかしら」
「ええ、いいわよ。先日は、うちが貰ったから、お互いさまよ。遠慮しないで」
食料品の流通が限られるようになったため、困った時には互いに食糧の分け合いをするようになった。
「隣が火事だから、応援にいってくる」
「わかった。俺も近所の人を呼んですぐにいくよ」
災害時には近所の者たちで協力して、応援にあたるという行為がされるようになった。
「昨日はごめんなさい。酷いことを言ってしまって……」
「そんな、泣くようなことは……そこまで気にしてないよ」
メールではわからない相手の表情を見ることで、相手の気持ちがわかるようになった。
人々の考えも徐々に変化していき、新エネルギーへの執着も徐々に薄れていった。
三十年後には気候の改善がみられ、各国の代表たちに新たな問題が提示された。新エネルギーを再び使用するかという検討案である。
「では、報告を。我が国では孤独死が減少しました。確認の手段が訪問だけになったからでしょうな」
「我が国では犯罪件数が減りました。助け合いから生まれた地域の目の効果があるのかと思われます」
「隣国との対立が減りました。エネルギーをむやみに消費したら、世界各国の経済制裁ですからね。リスクを考えると争いなんてできるものじゃない」
エネルギーを使用しなくなった結果が、いくつも報告される。
「しかし、エネルギーを使わなければ発展は衰えるわけで……」
そのなかで、ようやく新エネルギーを使用するメリットがひとつ出され、各国の代表は悩みに悩みながら唸り声を出した。
「仮にです。新エネルギーを使用したことで、また同じような異常気象が発生したら、どうしたらいいでしょうか。また新エネルギーの使用禁止となると、かなり批難をあびる気がします」
各国の代表たちは悩む。このままの生活を人類は続けていけばいいのか。あるいは、新エネルギーを使用したほうがいいのか。
見えない未来への選択肢ほど難しいものはない。
会議室は張り詰めた空気で支配されていた。何故なら今、この場で人類の存亡をかけた話し合いがされていたからである。
「これは自然界の怒りといっていいだろう。我々は自然界という神に試されているのだ」
この発言に全ての者が反論できずに首肯する。それだけ人類は追い詰められていた。
百年前、人類はある問題を前にした。自然エネルギーの枯渇問題である。しかし、人類は自然エネルギーを無尽蔵に使い続けた。新エネルギーに移行すると決めていたからだ。
結果、自然エネルギーは地球上から消えた。代わりに新エネルギーが使用されはじめたのだが、その十年後、新たな問題が発生した。第一に気象の異常である。
北極、南極の氷が解け、各国の気候が一変した。都市部が砂漠なみの気温になり、砂漠が巨大な湖となった。熱帯地域が凍りつき、寒冷地域で熱帯魚が確認されるようになった。その気候や気象が維持され続けるなら、まだ生物も環境に適応できただろう。しかし、一年も経たずに気候が急変する地域もみられた。
「この異常気象の原因は自然破壊と研究者たちは口を揃えて言っていますからな。このままでは、まずは環境適応できない生物が死に、植物も育たなくなるでしょう。そして、最終的には人類は飢餓に喘ぎ、滅亡してしまう。各国がGDPを犠牲にして改善にのり出すしかないでしょうな」
各国代表者たちの話し合いの結果、むやみにエネルギーを消費する行為が禁止された。そして、人類はエネルギーに頼らない生活を余儀なくされたのである。
そこで第二の問題が発生した。エネルギーに頼りきった先進国の反発である。しかし、これは重い経済制裁というかたちで抑えられた。
人類滅亡の危機のなかでは勝手は許されない。全人類に重責が課せられた。
情報伝達、流通も最小限に抑えられ、人々の生活は古き時代の生活のように一変したのだ。そのため、今の時代では忘れ去られた、こんな会話がされるようになった。
「お米がなくなっちゃったの。いただいてもいいかしら」
「ええ、いいわよ。先日は、うちが貰ったから、お互いさまよ。遠慮しないで」
食料品の流通が限られるようになったため、困った時には互いに食糧の分け合いをするようになった。
「隣が火事だから、応援にいってくる」
「わかった。俺も近所の人を呼んですぐにいくよ」
災害時には近所の者たちで協力して、応援にあたるという行為がされるようになった。
「昨日はごめんなさい。酷いことを言ってしまって……」
「そんな、泣くようなことは……そこまで気にしてないよ」
メールではわからない相手の表情を見ることで、相手の気持ちがわかるようになった。
人々の考えも徐々に変化していき、新エネルギーへの執着も徐々に薄れていった。
三十年後には気候の改善がみられ、各国の代表たちに新たな問題が提示された。新エネルギーを再び使用するかという検討案である。
「では、報告を。我が国では孤独死が減少しました。確認の手段が訪問だけになったからでしょうな」
「我が国では犯罪件数が減りました。助け合いから生まれた地域の目の効果があるのかと思われます」
「隣国との対立が減りました。エネルギーをむやみに消費したら、世界各国の経済制裁ですからね。リスクを考えると争いなんてできるものじゃない」
エネルギーを使用しなくなった結果が、いくつも報告される。
「しかし、エネルギーを使わなければ発展は衰えるわけで……」
そのなかで、ようやく新エネルギーを使用するメリットがひとつ出され、各国の代表は悩みに悩みながら唸り声を出した。
「仮にです。新エネルギーを使用したことで、また同じような異常気象が発生したら、どうしたらいいでしょうか。また新エネルギーの使用禁止となると、かなり批難をあびる気がします」
各国の代表たちは悩む。このままの生活を人類は続けていけばいいのか。あるいは、新エネルギーを使用したほうがいいのか。
見えない未来への選択肢ほど難しいものはない。



