『破天荒』
我が仕事場には破天荒な社員がいる。入社六年目なのだが、新入社員の頃から落ち着かない性格で、突拍子のない行動に出ることが多い。
本人曰く「新奇こそ芸術」らしいのだが、慣例を重んじる私は、その思想が全く理解できない。しかも、この破天荒な社員が行動を起こすと、必ず前代未聞の騒ぎがおきる。
「では、出張に行くが、私がいない一週間は、いつも通りの仕事をこなすように」
「はいはい、いってらっしゃい。お気をつけて」
二つ返事ではあるが、全く責任感のカケラがない。漫画を読みながら菓子を食べている姿に、息を吐くしかない。
「念を押すが、いつも通りの仕事をこなすように」
「俺はいつも、いつも通りの仕事をしていますよ。留守中は大船に乗ったつもりで任せてください」
この返事を何回聞いただろうか。しかし、約束を守ってもらった覚えはない。
だが、出張しないわけにもいかないので、引き継ぎを任せた。今回は海外出張だ。どうやら、向こうもいろいろ問題が出て、収拾がつかない状態らしい。
不安が募る中、海外に飛び、問題を確認する。私が着いた時には、かなり被害が出ており、快復させるまで数年は必要だと感じた。
「お忙しいところ、ありがとうございました。応援、助かりました」
帰り支度をしているところで、深々と頭を下げられる。
「いえいえ、はやめにこちらで対処していたら、私どもの影響も少なくなりますから」
「ええ、お蔭さまで。被害はここだけで抑えられそうです。しかし、大丈夫でしょうか。何やら向こうでは問題が起きているようなのですが……」
相手に言われて、心臓の鼓動がはやくなる。やはり、うちの破天荒が何かやらかしたか。
慌てて状況を確認すると、既にニュースで騒がれるほどになっていた。しかも、被害は昨年以上になりそうだ。
問題というのは一度脳に刻みこまれると、記憶が薄れるまでかなり時間がかかる。それは災難しかり、悲劇しかり。日々、その記憶が薄れるようにと修正してきたのに、あの破天荒のせいで台無しだ。
「報告ありがとうございます。すぐに戻ることにします」
自慢の愛雲に乗って上昇すると、フルスピードで戻ることにする。昨年もそうだったが、とにかく風が強い。煽られて愛雲から振り落とされそうになりながらも、何とか無事に到着することができた。
破天荒社員に気づかれないよう近づくと、まずは何をしたのか様子を見る。操作盤のパワーは最大限に上げられていた。しかも、今回は配線も触ったらしく、全く違う構造になっている。
「あっ、はやかったですね。また伝説つくっちゃいましたよ」
ニュースを見ると十年に一度が、今年は二回と騒がれている。怒りを抑えて操作盤のパワーを下げ、悪戦苦闘しながら配線を直すと、破天荒社員は反省することなく笑った。
「俺が生み出した天気を、人間がどのような新語にするのか、今から楽しみだ」
人間はまた異常気象と騒ぐだろう。一度、生み出された気象をすぐになくしてしまうと、あれは何だったのかと人間は我々、空の神の所業を疑うことになる。
そのため、徐々に異常気象を記憶から取り除くためなくしていかなければいけないのだが、この破天荒は、そんなことまで頭が回らないらしい。
人間のニュースでは記録が破られた異常な天候と騒いでいる。私は頭を抱えると、来年こそは何事も起こさないことを誓うとともに心の中で叫んでいた。
「この破天荒ならぬ、破天候め」と。
我が仕事場には破天荒な社員がいる。入社六年目なのだが、新入社員の頃から落ち着かない性格で、突拍子のない行動に出ることが多い。
本人曰く「新奇こそ芸術」らしいのだが、慣例を重んじる私は、その思想が全く理解できない。しかも、この破天荒な社員が行動を起こすと、必ず前代未聞の騒ぎがおきる。
「では、出張に行くが、私がいない一週間は、いつも通りの仕事をこなすように」
「はいはい、いってらっしゃい。お気をつけて」
二つ返事ではあるが、全く責任感のカケラがない。漫画を読みながら菓子を食べている姿に、息を吐くしかない。
「念を押すが、いつも通りの仕事をこなすように」
「俺はいつも、いつも通りの仕事をしていますよ。留守中は大船に乗ったつもりで任せてください」
この返事を何回聞いただろうか。しかし、約束を守ってもらった覚えはない。
だが、出張しないわけにもいかないので、引き継ぎを任せた。今回は海外出張だ。どうやら、向こうもいろいろ問題が出て、収拾がつかない状態らしい。
不安が募る中、海外に飛び、問題を確認する。私が着いた時には、かなり被害が出ており、快復させるまで数年は必要だと感じた。
「お忙しいところ、ありがとうございました。応援、助かりました」
帰り支度をしているところで、深々と頭を下げられる。
「いえいえ、はやめにこちらで対処していたら、私どもの影響も少なくなりますから」
「ええ、お蔭さまで。被害はここだけで抑えられそうです。しかし、大丈夫でしょうか。何やら向こうでは問題が起きているようなのですが……」
相手に言われて、心臓の鼓動がはやくなる。やはり、うちの破天荒が何かやらかしたか。
慌てて状況を確認すると、既にニュースで騒がれるほどになっていた。しかも、被害は昨年以上になりそうだ。
問題というのは一度脳に刻みこまれると、記憶が薄れるまでかなり時間がかかる。それは災難しかり、悲劇しかり。日々、その記憶が薄れるようにと修正してきたのに、あの破天荒のせいで台無しだ。
「報告ありがとうございます。すぐに戻ることにします」
自慢の愛雲に乗って上昇すると、フルスピードで戻ることにする。昨年もそうだったが、とにかく風が強い。煽られて愛雲から振り落とされそうになりながらも、何とか無事に到着することができた。
破天荒社員に気づかれないよう近づくと、まずは何をしたのか様子を見る。操作盤のパワーは最大限に上げられていた。しかも、今回は配線も触ったらしく、全く違う構造になっている。
「あっ、はやかったですね。また伝説つくっちゃいましたよ」
ニュースを見ると十年に一度が、今年は二回と騒がれている。怒りを抑えて操作盤のパワーを下げ、悪戦苦闘しながら配線を直すと、破天荒社員は反省することなく笑った。
「俺が生み出した天気を、人間がどのような新語にするのか、今から楽しみだ」
人間はまた異常気象と騒ぐだろう。一度、生み出された気象をすぐになくしてしまうと、あれは何だったのかと人間は我々、空の神の所業を疑うことになる。
そのため、徐々に異常気象を記憶から取り除くためなくしていかなければいけないのだが、この破天荒は、そんなことまで頭が回らないらしい。
人間のニュースでは記録が破られた異常な天候と騒いでいる。私は頭を抱えると、来年こそは何事も起こさないことを誓うとともに心の中で叫んでいた。
「この破天荒ならぬ、破天候め」と。



