「ナ、ナオ・・・っ」
3―Cの教室の入り口の直ぐ横で、鞄を抱きかかえるように胸に握り締めながら、私は立ち竦んでいた。
ぞろぞろと教室から出てくる男子生徒に、いちいちびくびくしながら私は震えるように呟く。
ナオ、はやく出てきて・・・っ
そう何度も祈るように。
「あれ?あの子、C組の子じゃねーよな?」
「どのクラスの子だろ・・・、訊いてみっか?」
ひそひそと何か悪巧みでもしているかのように、私のほうに目配せしながら話す男子。
思わずブルッと身震いをすると、すっと近づいて来た彼らに、慌てて逃げようと一歩踏み出した。
そのときだった。
「小夜?何してんの、」
後ろから、聞きなれた声を耳にして慌ててUターンをする。
「ナ、ナオ!」
助かった、と言わんばかりに、私の頬は無意識に綻んだ。