「すまなかった」




ユキを追い、自室に戻ると窓際に突っ伏して泣いている姿を見つけた。
その背中に言葉をかけると、ピクッと肩を震わせた。



「・・・ケーキの作り方を教えてもらっていたんだな」

「・・・」

「フランに聞いた。・・・あのケーキはお前が一から作ったのだと」





俺の誕生日にサプライズがしたいと、おいしいケーキ屋を探し、身分を隠して教えてもらいに行っていたのだと。
王妃だとばれると、きっと正直に言ってもらえないかもしれないからと、うまいまずいとはっきりと言ってもらえるよう王妃であることを控えて。
本当においしいものを作りたいからと、必死で毎日のように通っていたのだと。



だからあの男は、今日のこの日にあそこにいた俺を追い返したんだ。
ユキがしようとしていたことを知っていたから。

俺を見て、ユキの好きな人という意識しかなかったのもそういう事だったんだ。






「俺は、お前のこととなると周りが見えなくなるんだ・・・。お前が、知らない男に笑顔を向けているのを見て・・・たまらなく嫉妬した」

「・・・」

「俺だけのものだと。・・・誰にも、お前の笑顔を見せたくないと・・・。どんどん、欲深くなって・・・。そんな気持ちをお前に押し付けようとした・・・」




怖ろしいほどに嫉妬深い自分。