城下の国民たちはとてもよくしてくれる。
いつも声をかけてくれたり、慕ってくれるのは嬉しいが、時には静かになりたい時もあるのだ。





「えー、そうなんだ!」




聞きなれた声に顔をあげると、道の反対側に見慣れた姿を見つけた。
見慣れたはずのそれは、いつも以上におしゃれをし、可愛い衣装を身に纏ったユキ。

そしてその隣には、若くてすらっとした長身の男。
優しそうな表情のその男は笑顔でユキを見ている。
ユキもユキで、笑顔を浮かべながらその男と歩いていた。



なんだ。




なんで、男と歩いている。
あれは、誰だ。




俺が公務がないと言っていた時に、俺を放って他の男と。





いったい、どういう事だ。




頭の中がグルグルといろいろな思考に苛まれ、どうにも落ち着かない。
そんなはずはないと、自分に言い聞かせてみてもこの目に見えているものは現実で。




ユキが他の男と楽しそうに歩いている。
それは夢なんかではなく現実で。