でも、それができるのはきっと、本人であるカイ自身。
カイが、自分を許せなければ、カイが幸せになんかなれない。
「幸せに、なって、カイ」
「・・・っ」
カイが俯く。
額を手で抑え、その手はわずかに震えていた。
苦しかったよね。
辛かったよね。
してしまった事。
取り消せない事実に、押しつぶされそうになって。
カイにとって、ここで働くという事は、もしかしたら普通に裁かれるよりも酷なことだったのかもしれない。
今になってそう思った。
「・・・立場が逆だね」
私は小さく微笑むと、カイの側に立ちカイの背中を撫でた。
小さく震える身体が、寂しく思えて。
カイの手が、そっと私の腰に回されギュッと抱き寄せられた。
震える手が私の腰に巻きつけられた。
私は、そっと腰辺りにあるカイの頭を抱きしめる。
そして右手でそっと背中をさすった。


