車がマンションを出てから、私はどこに行くのかわからないけど、車に乗っていることさえも楽しくてソワソワしていた。
そんな私を見た幸治さんが、
「そんなに楽しみにしてたんだな。」
という。
「だって、、、、初めての旅行。」
とつぶやくと、
「そうだな、生まれて初めてだな。この先、お前が医者になったら、なかなか旅行なんて行けないぞ。出張以外でな。」
え!!
そんなぁ。幸治さんとはこれが最初で最後になるかもしれないの??
と不安げな顔を幸治さんを見ると、
「そんな顔するな。またいつか行けるから。」
私の考えていることをお見通しだった。
車に乗って一時間が経ったところ、大きな宿の前で車が泊まった。



