その日の夜、幸治さんが一人で私のところにきた。
「かな、どうしたんだ?」
まだ傷が痛む。麻酔は完全に切れてるけど、あれから薬も飲まずだったから、痛みに耐えるのに必死だった。
今は体が熱い。
「なぁ、話せよ。」
幸治さん、痛い上に怠いんだよ。
そっとしておいてよ。
「ん?顔が熱くないか?夕方は熱どうだった?」
と私の額に手を置く。
このままでいてほしい。何も聞かないで。このまま手を置いたままでいて。
私は思わず左手で、私の額に置かれた幸治さんの手を握った。
「やっぱり、熱あるな。」
そんなこと、どうでもいいよ。
「こ、こうじ、、さん。
この、、、、ま、ま、でいて。
手を、、、離さない、、で。」
と言うのがやっと。
「分かった。そのかわり、ちゃんと話すんだ。」
鬼、、、、、、
しょうがない。
「昨日ね、、、朝の吸入の時、、
すごく辛かった。
進藤先生、怒らせちゃった。
進藤先生に、、、鼻をつままれて、苦しくて、、、
吸入で、あんなに苦しくなるなんて。」
「あぁ、進藤先生に聞いたよ。むせて全然吸えなかったんだろ?前よりひどくなってるんじゃないか?
進藤先生は、怒ってないぞ。治療のためだ。
苦しくても、今は吸入しか治療方法がないんだ。
かななら、わかるだろ?」
と言われ頷く。
「それから、、、食欲なくて、、、でも先生に言われた通り、ご飯を食べたら、お腹が痛くなって。
でも、早く退院したい。
だから、触診された時、言えなくて。」
というと、
「お前、変わってないなぁ」
と幸治さんが笑う。
「前にもそんなことがあっただろ?」
そういえば。ちゃんと話さなかったから、ひどい目にあった。
「一つ一つ。
一つ一つでいいんだ。
病気も勉強も、一つ一つ克服していけば。」
そんなことしてたら、いつまで経っても、私は幸治さんに認めてもらえない!
「それじゃ、、だめ!
幸治、、、さ、、、ん。
いつまで経っても私を認めてくれない。」
「大丈夫だから。俺にはお前しか、大切な人はいない。」
えっ?
「大丈夫だから。」
今なんて?私、、、待っていればいいの?
「お前はお前のやるべきことをやっていればいいんだ。
だから、、、待ってろ。」
私は嬉しくて、涙が出てきた。
「泣くな、、、苦しくなるだろ?
もう看護師呼ぶぞ。」
と言うと、幸治さんは、ナースコールを押して、私に熱があることを伝えた。