掃除が終わる頃、部屋に進藤先生がやってきた。
「かなちゃん、どうした?ご飯戻しちゃった?」
優しく聞いてくれてるんだけど、午前中のことがあって、話せない。
看護師さんから、発作が出そうになったことも伝えられた。
「少し診察するよ。」
と言われるけど、私は動かない。
進藤先生はお構いなしに、私の服のボタンを看護師さんに開けさせ、聴診する。
絶対に悪くなってる。
自分でもわかる。
進藤先生は黙って聴診を終えて、次はお腹を押し始めた。
胃に進藤先生の手が押し込まれる瞬間、
痛っ!
激痛が走った。
けど、表情を変えないように必死に保った。
もうこれ以上、悪いところがあっては困る。
早く喘息を治さないと、退院できない。
「かなちゃん、痛いところがあったら言ってね。」
また私のことを見透かしているかのように、進藤先生は言う。
再び胃を押される。
けど、私は堪えた。
一瞬手を握ってしまったけど。
でも、これを進藤先生は見逃さない。
「痛いんだね?」
私は、痛いのを我慢して、
「大丈夫です。体中の打撲が痛みます。」
と嘘をついてしまった。
進藤先生は表情を変えず、
「そう。」
とだけ言った。
「もし痛くなるようならすぐに言ってね。本当はこれから吸入したいけど、少し休みなさい。」
と言われた。
少しきつく言われた感じがした。
そんなことよりも、もう体がへとへとになっていた。



