玄関の鍵を開けるとすぐに、幸治さんに手を引かれて部屋に入った。



 

リビングのソファに座らされ、急いで幸治さんが部屋から持ってきた吸引器を口に当てられる。





「たくっ!医学部に入ったんだから、自分の体のことくらいもっと分かるだろ!」   






そんなこと言われても、まだ体の名称を覚えるのに必死なのに。





きっと、幸治さんは頭がいいから、大学で私みたいに落ちぶれてなんかなかったんだよ。




だからそんなこと言えるんだ。





無償に自分が悲しくなってきた。
 




「ちゃんと聞いてるのか?」







声を出したら涙まで出てきそう。





そしたら、勉強がいっぱいいっぱいなことがばれちゃう。





あと6年もあるのに、まだ入って一ヶ月した経ってないのに。






と思うと、これ以上幸治さんの前には、いられなかった。







私は吸引器をソファに投げつけて、部屋に向かった。






リビングから






「ちょっと待て!終わってないぞ!」






と幸治さんが怒鳴る声がする。







部屋について扉を閉めると涙が溢れ出た。






幸治さんが廊下を歩いて部屋にむかってくるのがわかる。





涙を止めないとと思えば思うほど、涙が止まらない。






「開けなさい!」






幸治さんがカンカンに怒ってるのがわかる。




余計に開けれないよ。





私は、







「い、、、や。」






としか言葉が出ない。





でもその言葉のあと、先生はドアを開けることなく、私の部屋から遠ざかっていった。





私は部屋で着替えて、そのまま眠りについた。