「幸治、、、さ、、ん」
と呟くと、たけるとまいが一緒に私を見たけど、私は幸治さんの登場に目が離せなかった。
幸治さんは私に気付いてるのかな、、、
こちらは一度も見ない。
それよりも、講義に集中しないと。
特別講義だから、ものすごく楽しみにしていた。
講義が始まった。
幸治さんは、今までに見たことのない顔で、医療について語った。
現在の小児医療。
教科書では、レジュメではわからない、小児の現場。
何百回とオペの練習も必要だけど、場数を踏むことの大切さ。
だけど、相手は大切な命。
一つ一つの命に、自分の命を懸ける想いで向かっているという。
そう話す幸治さんの顔は、本当に生き生きとしていた。
幸治さんのマイクを通した声。
とても聞いてて惚れ惚れしていた。
すると話は、小児での一番の苦悩という話題に。
それは、治療を嫌がり、逃げる子供達。
ん?もしかして、、、
過去に病院を抜け出した子供の話。
幸治さんは、患者の気持ちを考え、もっと早く対策をすべきだったと熱弁した。
大人が考えている以上に、子供の心は傷つきやすく、繊細であるということ。
また家庭環境で大きく変化するということ。
私は、間違いなく、この患者は私であると思った。
こんなに幸治さんが私のことを考えてくれていると思うと、たまらなく嬉しい気持ちになった。
そんなふわふわした気持ちでいると、講義は終わってしまった。
最後に、質問のある人は、このあと聞きに来て下さい。
と言われた。
すると講義を受けていた女性陣が一気に幸治さんに駆け寄った。
え?すごい人気。
私は特に質問はなかったけど、誰よりも幸治さんのそばに行きたかった。
すると隣にいたたけるとまいが、
「知り合い?」
と、不思議そうな顔をした。
「違うの。あの人が、佐藤幸治さん。」
「えっ?」
二人そろって驚いた顔。
「かなのお兄さん!?」
とたけるが聞く?
「まぁ、血はつながってないけど、、、
戸籍上でも、きょうだいではないけど。」
と私が答えると、二人は
「すごいすごい!あんなイケメンと暮らしてるのー!?」
とまいが声を弾ませた。
あんなにイケメンだよ。そのイケメンのこと、好きになっちゃったんだよ。
と、口に出しては言えないのが残念。
私は女性陣が群がる方向を見て、私も中に入りたいと思った。
でも、幸治さん、驚くよね。嫌がるよね。
知り合いがいるなんて、気まずいよね。