未知の世界3


「なぁ、今朝の先生って、どんな関係?」



とニックが今朝の幸治さんのことを聞いてきた。



私はこの研修中にニックに知られては、幸治さんに迷惑をかけると思い、



「なんでもかんでも、ニックに話せることばかりじゃないんだよ。」



と傷つけないように優しく言った。



ニックがどんな表情をしていたか、あえて見ないようにしたからわからなかった。



それからかなりの時間が経ったけど、ニックは黙っていた。



私は体が冷え切っていた。



「ニック、もう帰らない?」



ニックはうつむいていた顔をゆっくり上げて、私を見た。




「本当に、俺にはチャンスがないのかな?」




ニックは半べそをかきながら、私にいう。




「ごめんね。私には好きな人がいるから。本当にごめんね。」




「そっか、ごめんな。




俺、昨日かなの気持ちを聞いて、諦めることができたと思ったんだけど、昨日帰ったら、この研修中にかなが俺に振り向いてくれないかと思っちゃって。



そしたら今朝、ものすごいイケメンの先生に声をかけられてて、かながものすごく嬉しそうな顔をしてるから、俺、悔しくって。




意地でもかなを俺に振り向かせたいって思ったけど、やっぱろ無理だな。



かな、あの先生のこと、好きなんだろ?」




え?気づかれてた?




「な、なんで?」



「見ればわかるよ。目が違うもん。



俺や他のやつらを見る目と、あの先生を見る目が全く違うから。



まぁ、あの先生にはかないっこないなぁ。」



「どうして、そう思うの?」




「だって、あの先生ってこっちの病院でもかなり有名だよ。



確か、お父さんも有名な医者で、心臓外科のスペシャリストだって。



今は病院で研究しながら、世界から集まる心疾患の患者のオペをしてるんだろ。」




知らなかった・・・・・。




お父さんも幸治さんも有名なんだ。




私はポーっとした頭で、そんなことを思っていた。




ホントに、さっきから寒い・・・・・・。







私は少しずつ、ニックの話しから意識が遠のいていった。