「なぁ、今朝の先生って、どんな関係?」
とニックが今朝の幸治さんのことを聞いてきた。
私はこの研修中にニックに知られては、幸治さんに迷惑をかけると思い、
「なんでもかんでも、ニックに話せることばかりじゃないんだよ。」
と傷つけないように優しく言った。
ニックがどんな表情をしていたか、あえて見ないようにしたからわからなかった。
それからかなりの時間が経ったけど、ニックは黙っていた。
私は体が冷え切っていた。
「ニック、もう帰らない?」
ニックはうつむいていた顔をゆっくり上げて、私を見た。
「本当に、俺にはチャンスがないのかな?」
ニックは半べそをかきながら、私にいう。
「ごめんね。私には好きな人がいるから。本当にごめんね。」
「そっか、ごめんな。
俺、昨日かなの気持ちを聞いて、諦めることができたと思ったんだけど、昨日帰ったら、この研修中にかなが俺に振り向いてくれないかと思っちゃって。
そしたら今朝、ものすごいイケメンの先生に声をかけられてて、かながものすごく嬉しそうな顔をしてるから、俺、悔しくって。
意地でもかなを俺に振り向かせたいって思ったけど、やっぱろ無理だな。
かな、あの先生のこと、好きなんだろ?」
え?気づかれてた?
「な、なんで?」
「見ればわかるよ。目が違うもん。
俺や他のやつらを見る目と、あの先生を見る目が全く違うから。
まぁ、あの先生にはかないっこないなぁ。」
「どうして、そう思うの?」
「だって、あの先生ってこっちの病院でもかなり有名だよ。
確か、お父さんも有名な医者で、心臓外科のスペシャリストだって。
今は病院で研究しながら、世界から集まる心疾患の患者のオペをしてるんだろ。」
知らなかった・・・・・。
お父さんも幸治さんも有名なんだ。
私はポーっとした頭で、そんなことを思っていた。
ホントに、さっきから寒い・・・・・・。
私は少しずつ、ニックの話しから意識が遠のいていった。



