「おふくろがこれを渡せって。」
と幸治さんの手には紙袋があった。
「また朝飯食べずに、来たな。親父もかなの体を心配してるぞ。
しっかり食べて、体調を壊さないようにしろよ。」
そう言うと、昨夜のように私の頭を撫でて、幸治さんは職場に戻って行った。
また昨夜の出来事が蘇ってくると、私は顔を赤らめた。
医局に戻ると、
「かな、さっきのって・・・
一緒に日本から来た医者だよね?知り合い?」
とニックに聞かれる。
私は、曖昧に頷いて返事をした。
ニックはそれ以上聞かなかった。
昨日のことも、それ以上深くは聞かれなかった。
もう、どうでもいいと思ってくれたんだと、私は思っていた。



