テーマパークにはたくさんの乗り物があった。
ニックはやたらと二人っきりになるような乗り物を選んだ。
コーヒーカップのおかげでしばらく頭がフラフラしていた。
あんなに恐ろしい乗り物がこの世にあるとは・・・
ニックは平気な顔をして乗っていたことには驚いた。
ニックは私が誰と暮らしているのかということをやたらと気にした。
さっきの電話が気になっているのかもしれない。
でも私からニックに話すことはもっぱら病院のこと。
だって、研修のパートナーでもあるんだから。
するとニックが、
「かな?休みの日まで病院の話はよさないか?
それと研修始まって一週間、言いたいことがあった。
かな、もっと休憩しろよ。なんで休み時間まで病室に行くんだ。
日本人は休まず働く人が多いって聞いたけど、ここはアメリカだぜ?」
と話し始めた。
「ご、ごめん。休みの日まで病院の話しばかりで。
でも、普段忙しいから、こういう時しかニックの研修に対する想いって聞けなくて。
それと、休憩時間だからこそ、病室で子供達に会える。だから私は行くんだよ。
まだ医療行為は全くできない私たちだからこそ、今は患者さんである子供達のそばに寄り添ってあげるべきだと思ってる。
違うかな?」
私はニックの顔をチラッと見た。
「俺にはその考えがわからない。
休むときには休むようにしてるから。
それに研修なんて、本当にちょっとしかやれることなくて、俺にはつまらない。
早く医者の免許を取れば、こんなことしてなくても済むのに。」
「ニック、それは違うよ。
研修している一日は早いけど、先生たちは帰らず仕事してってる。
研修の後でも、わからないことは質問に答えてくれるし、夜間救急にだって手伝いに行かせてくれてる。
せっかくの研修なんだから、もっと大切にしなよ。」
ニックがそんな風に研修を思っているなんて思わなかった。
私はニックだから、わかってくれると思って強く言った。
するとニックが突然走り出した。
私は思わずニックを追っかけていた。
だって、ここで一人になったら、私完全に帰れなくなっちゃうんだもん。



