「僕と約束したよね?」
声は優しい口調だけど、それは努めてそうしているようだ。
「は、、、、、、、、、、、、、、、、、ぃ。」
「今日の検診、全く覚えてなかったでしょ!?」
「は、、、、、、、、、、、、、、、、、ぃ。」
「今朝、佐藤先生に検診があるって言われていたでしょ?」
覚えていない。
「それなのに、来なかったってことは、検診に来る気なんてサラサラなかったの??
自分の体はどうでもいいの??
医者になって一人でも多くの患者さんを救いたいんじゃないの??
それなのに、自分が自分の病気を治す努力をしないで、どうするの!?
本当に医者になる気があるの!?」
あぁ。進藤先生を完璧に怒らせてしまった。
もう嫌。
自分が嫌になっちゃう。
今朝、幸治さんが言ったっていうけど、全く覚えてないよ。
今朝、幸治さんと会話したことも覚えてないのに。
私は進藤先生の怒りがおさまっていないことが気になって仕方がない。
「かなっ!」
ビクッ!
後ろから幸治さんの怒鳴り声。
はぁ。もう嫌。
前向いても、後ろ向いてもどうせ怒られるんじゃん。
確かに私が一番悪いけどさ、そんなに怒らなくても。
遅刻したけど、こうやって来たんだし。
と下を向いてると、
「かなちゃん、ここは病院。治す気がないなら、帰ってもらっていいから。」
しばらく沈黙が続いた。
私はずっと沈黙してるけど。
治す気がないなら、帰ってもらっていいから
その言葉で私は、自分が治す気がないから検診って言われても気づかなかったんだと、思った。
もう、帰ろう。
進藤先生をここまで怒らせてしまって、治療してくださいとは言えない。
私は、そのまま立ち上がり、進藤先生に頭を下げて、診察室から出ていった。



