気がつくと、そこは見たことのない天井。
ボーッとしていると、
「気付いたのね。」
といい、医務室の保健師さんかわからないけど、白衣を着た女性が近づいてきた。
私の腕に刺さったのは点滴。
ここは病院の附属大学だから、医者がいれば医療行為もできるんだ。
なんて関心しながら、天井を見つめていた。
「気分はどう?
こちらで調べて、保護者に大学から連絡したんだけど、つながらなくて。
もう夜の8時になるから、さっきまでいた彼氏くんは帰したわ。」
彼氏じゃないけど。
たける、今までそばにいてくれたんだ。
ありがとう。
それより、幸治さんに連絡されちゃったんだ。
心配される前に帰ろう。
「気分は良くなりました。タクシーで帰ります。」
と言うと、
「気分が良さそうな顔ではないけど、まぁ、タクシーでなら、一人で帰っても大丈夫かな。」
と言われ、私は医務室をあとにした。
大学からマンションまで、そんなに遠くない。
いつか幸治さんと歩いたこの道。
今は幸治さんが、ものすごく遠いところにいる気がしてきた。
私は、医務室で寝ていた時よりもだるくなった体で、とぼとぼ歩いた。
いつもより長く感じる帰り道。
体もだるくて重いし、なによりも幸治さんが帰ってるかもしれなくて、家に帰るのが辛い。
もう少しだけ、外にいてもいいよね。
帰り道にある公園のブランコに座った。
ブランコをこぐ力さえない。
重力に従って、うなだれる。
気付くとうとうと寝ていた。
もう限界なのかな。
でも発作は出ていない。
公園は誰もいない。
ブランコがきしむ音しか聞こえない。
また一人ぼっちになった気がした。
幸治さんとの生活、アメリカから帰ってきたお父さんとお母さんとの旅行。
すごく楽しかった。
今までには経験したことのない毎日だった。
あれは夢だったのかもしれない。
やっぱり私は、
一人ぼっちなんだ。
と思うと、涙がボロボロと出てきた。
顔中が熱い。
頬に伝う涙も熱くなってる。
吐く息も、熱い。
込み上げてくる感情は、まるで私の顔を締め付けるかのようだ。
苦しっ!
「プハッ、はぁはぁはぁ。」
気付いたら、無意識のうちに呼吸をしていなかった。
フーっと息を整える。