放課後、私は日直日誌を職員室の隅にある担任の机に置いて玄関へと向かった。


部活に入っていない私は基本的にすぐに帰ることにしている。


一緒に帰る友達もいないからね。


下駄箱で靴とスリッパを替えていると、私の名前を呼ぶ声が聞こえた。


聞き覚えがあった。というか最近よく聞いている明るい声だ。


「ゆなさん。待ってよ」


「なに?」


靴に履き替えて、校門に向かう。


するとなぜか追ってきて、


「一緒に帰らない?」


と、提案をしてきた。



当然却下をする。



「お、ゆうき〜! じゃ〜なぁ! でさ、ゆなさんってよそよそしいからゆなでいい?」


……この人に『一緒に帰らない』というのは一切ないらしい。


てか佐倉さんならまだ分かるけどゆなさんって別によそよそしくなくない?


「ま、勝手に呼ばせてもらうさ」


「変な人だね、君って」


「変な人じゃねーよ、俺は藤晴樹。晴樹でいいよ! って自己紹介しなくても知ってるか!」


藤くんでいいや。


速攻で決めた。


「で、藤くん。私に構わないでくれる?」


直球でいってみた。


「なんで構っちゃいかんの?」


「なんでって……」



私は返答に困った。


余りに真剣な顔をするからだ。



いつもおちゃらけていてまるでスマイルが顔に張り付いている人だと思ってたけどこんな顔もできるらしい。



黙り込むと、横に並んでいた藤くんは目の前に来てピースサインをした。



「じゃあ、いいんだね」


「う……あ、あれかな。私に構うとみんなから敬遠されちゃう。私みたいにさ」


苦し紛れに言う。


けどけっこう的を得てる返しではないだろうか。


そうだ。私にちょっかいかけてばっかりいると藤くんも変な目で見られてしまうかもしれない。