「何の用なの? なにもないならあっちいってよ」
注目されたくないから。
「そんなこというなよ。俺は佐倉さんと話したいんだよね」
はぁ?
「意味わかんない。私になんかして欲しいわけ?」
イライラしてくる。
この謎の行動は少し前からだった。
この人は私の心の玄関とやらを土足で勝手にあがって来てはぐちゃぐちゃにしていく。
彼の気まぐれで私が迷惑を被ることに気づいていない。なぜだか私を気にかけてくるけど、そのせいで余計なことに巻き込まれているのだ。
一部じゃ「あの子は気に入った男としか喋らない女」なんて噂されている。
なんだそれ、勝手な憶測で決めつけるな。
なんにせよ全ての発端はこの藤大翔のせいである。
だから私は、彼のことが大嫌いだった。
「ん〜して欲しいことね。あるよ」
返事すらしたくないから私は聞かないことにして無視した。
「ゆなさんの笑顔を見せて欲しいんだ」
何いってるんだこいつは。
私は思わず後ろに振り向いて睨んでやった。
けど私の威嚇は意に介さず、子供のようなカラッとした爽やかな笑顔を保っている。
なんでいつも笑っているんだ、この人は。
私はもう一度確信する。
こいつは変人だってことがね!


