おかげでもちろん高校生になってからと言うものの友達なんて存在はいない。
当たり前だ。
私だってこんないつも無愛想なやつとは友達にはなりたくもない。
「なあ」
自分でいって悲しくなるけどね。
「なあってば」
でも別に友達なんていらないし。
「聞いてる? ゆなさん」
まあ修学旅行の時とか、強制的にグループを組まされてしまうから楽しくない数日間を過ごすことになるのが面倒くさい。
「佐倉ゆなさん〜!」
「ああもう! なに!? さっきからうるさいな!」
私は後ろを振り向く。
「あ、やっと気づいた」
そこにはうざいくらいにニコニコ笑顔の男子が席に座っていた。
彼の名前は藤大翔。皆からは藤くんと呼ばれている。
学校一イケメン……というわけではないけど、たぶんクラスで一番人気者ではあるはすだ。
その理由は単純。
いつも笑ってるから。
いつも楽しそうにしているから。
常に全力で何事にも取り組んでいるから。
つまり、今の私と真逆の人というわけだ。
「なんだよそれ」
「だって反応しないから」
藤くんは子供のように唇の先をとがらせる。
無視しようとしてたんだけど、あまりにうるさくて反応してしまった。
「ていうかなんでそこにいるの? そこ、あなたの席じゃないでしょ?」
確か後ろは気弱な男子だったはず。名前も知らないけど、配布物を渡そうとするといつもビクビクしてるやつ。あまりにも情けないから嫌いだ。
「ちゃんと借りていいか聞いたから大丈夫だよ。ははっ、そしたら佐倉さんに気をつけてだってさ。取って食われるわけじゃないだろってさ」
藤くんはけらけらと一人で笑っている。
どういう理由であれ、絡んで来て欲しくはなかった。
さっきから周りの視線が痛い。特に女子の。肌がピリピリする。きっとどこかに嫉妬の念が混じっている。
私はたまらず顔を伏せて言った。


