私、高杉歩美は夏休み前の期末テストを終えて疲れ果てていた。
「アユ、アユ。動かない、ただのしかばねだったのか」
机に上半身を放っていると千尋がきた。
大丈夫。ちゃんと生きてる。
ただテストは終わった。
数学係のくせに数学がダメダメだった。
80点いかないかも……!
「あ? 80点いかないかもとかなめてる? 赤点ギリギリの人の気持ち理解してんのかな?」
「ナチュラルに私の心読まないでよーっ痛い痛いっ」
千尋の親指を私のこめかみにぐっと押してくる。
すごく痛い。ちょっと泣いた。
こめかみに手を当ててさすっていると、いきなり目の前が真っ白になった。
「えっ、ん、なにっ!?」
全然見えないんですけど!
手で叩くと紙がひらひらと私の机に落ちる。
さっきのテストの問題用紙だ。
誰のだろ……って藤晴樹って。
ふ、藤くん!?
「そんなびびんなよ」
私はばっと後ろを振り向くと、そこには爽やかに白い歯を見せた藤くんが立っていた。
しかもすごく近い。
うっ、見たいのに見れない。
私はなんとか藤くんの首より下だけを視界に入れて聞いた。
「どうしたの?」
「いや、ここわかんなくてさ。男だれも解けてなかったし希望は高杉だけかなって」
藤くんは移動して私の正面にくる。
顔が近い。
すごく保存したい。