「で、ゆなちゃん。昨日藤くんと一緒に帰ってなんかあった?」
昼休み、アユは仏のような顔をしてざっくりと聞いてきた。
アユの背後から鬼が見えてるような気がしたけど幻覚だよね。
「特に何も……」
「え、後ろから抱きしめられてなかった? ねぇ、抱きしめられてたよね?」
アユさん。あなたはソフト部の練習しているはずですよね。
「そ、そんなわけない」
なんか頷いたらいけない気がする。
別の意味でドキドキした。
「……だよね。ないよね。そうしとくね」
背筋がぞくりとする。
狩人に狙われるうさぎを体験してるような気分になった。
おそるべし、藤くん同盟創設者といったところだった。
「アユ、顔がすごいこわい」
千尋がからあげをほおばりながら言う。
「いつも通りだよ? 千尋はいいよね、藤くん同盟にいながら彼氏がいるんだから」
「あはは〜。ま、とにかくアユを応援するよ。あ、もちろんゆなもね?」
といいつつ今度は卵焼きを食べる。
これは仲間に入れてもらったあとこっそり千尋から教えてもらったんだけど、アユ以外は別の人が好きだったり彼氏がいたりするらしい。
同盟というよりかアユとそれを応援するお友達っていう感じ。
そこによく私が入れたなぁといつも思う。


