「そりゃ反則」


お手上げだとばかりに手をあげる。


私は得意げに鼻をならした。


「そーゆーのは好きな人とかにやってよね」


藤くんはぺろっと舌を出す。


「じゃあゆなのこと好きだからやったってことで」


「じゃあってなんなの…」


ほんと藤くんは何考えてるか分からない。


ただ確実にわかるのは私をからかって楽しんでるってことだ。


他の人にもこういういじわるをするのかな。


見たことないけど隠れてしてるのかも。


「藤くんってあれだね。プレイボーイってやつだね」


藤くんは首をかしげて、横に振った。


「ちげーよ。俺って結構チキンだから」


「おくびょうな人が照れてる顔見たいだけで後ろから抱きついてくる?」


……あ。


「やっぱ照れてたのかー」


企みのある笑みを浮かべる。


う、うかつだった。


またなにかされる前に帰らなきゃ。


「私そういえば見たかったテレビあるから帰る! じゃあね!」


私は一目散に自宅にダッシュで帰った。


玄関をくぐってもまだ、藤くんの温もりがなくなることはなかった。


それにしばらく続いた耳に響くくらいの鼓動は走ったせいじゃないってのは、私でも理解できた。