「こっち向きなよ」
無理。
「ねぇ、ほらほら」
ダメだってば。
「うーん。それならこうするっ」
「ちょっ!」
ぎゅっ。
背中に温もりを感じる。
白シャツの袖から見える腕は男のくせに白くて、綺麗だった。
って、そうじゃなくて。
「なにしてんの、離してよ…」
「じゃあこっち向いて?」
「やだ」
恥ずかしい。
「じゃあこのままだけど」
「それも嫌だっ」
「わがままだなぁ」
なにがわがままですか。
彼女でもない私にこんなことをしてくるなんて、どういうつもりなんだろう。
何にしろこのままいるといろいろと危ない。
たぶん私は心臓が破裂して死ぬ。
それくらいに胸が高まってる。
「ん?すっげぇバクバクいってね?」
「いってない、というかはやくこれ止めてよっ」
やばい。ばれる。
私はがんばって振りほどこうとする。
でも解いてくれそうにない。
「あばれんなって」
「……そろそろ離さないと襲われてるって叫ぶよ」
すっと腕の力が弱くなる。
なんか勝ってやったって気分だ。


