学校に行くと、また数学係の女の子が私に話しかけてきた。


「佐倉さん。これ、ノートです」


「ありがとね」


「あ……はい?」


前とは違って、女の子は不可解そうな顔をして後ろの集団に混じっていった。


聞き耳をたてていると、藤くんの怒声が聞こえてきた。


「はぁ!? 違うって! それは違うっ」


なんの話だろうか。


私の意識は藤くんと男子たちの会話へと切り替わった。


だいたい聞いていると、どうやら好きな人の話らしい。



藤くんの好きな人。



だれか、いるのかな?



「俺は好きな人いねぇって。気になる人は……いや、いない」


言葉を濁したからか、男子達の野次が飛ぶ。


「いないよな、ゆな!」


「なんでそこで私に振るっ!」


つい立ち上がって大声を出してしまった。


喧騒あふれていた教室がシーンと静まる。



やってしまった。



私はわざとらしく咳をして、座る。


しばらくすると、クラス中がざわついてきて、1人の男子が私に言ってきた。


「まさか、佐倉さん、藤とそこまで……。もしかして二人って……」


完全に誤解をしてる。



「付き合ってんの?」




その言葉が火種となった。


一気にクラス内のボルテージが上がった。


女子軍団の悲鳴。
男子達の歓声。


藤くんを睨むと、目を逸らされた。


藤くん。あなたのせいですけど。