藤くんはいつもわらってる




「なにそれ。せこい」


「暇だから適当に言ってみたらほんとに頷くと思ってなかったんだもん」


そ、そういうことだったのか。


「はぁ……。最悪」


両手で顔を隠してうなだれる。


姉のことだ。


いろいろ聞いてくるのだろう。


でも、なんて言えばいいのかが分からない。


嫌いなのに、気になってるってどう考えても矛盾してる。


それは自分自身が理解してる。


「どんな人なの?」


どんな人……か。


いつも笑顔で、うざいくらい話しかけてきて、変な人で。


「いじわるな人」


一言でまとめるならこれだ。


顔を上げると、姉はニヤニヤと口の端を吊り上げていた。


頬杖をついて私を見つめるその瞳は何もかも見透かしているようで。


「俺様系? そんな人漫画か小説の中だと思ってたけどね」


「それは違うかな。なんてゆーか」


「不思議な人〜みたいな感じ?」


「そんな感じかな」


「それで?」


「ん?」


姉が寄り添ってくる。


「好きなの?」



チクリ。



針で心臓をつつかれたような痛みがした。



好き、ではないはずだ。



嫌い。これはずっと言い続けてる。



正直思った。



私は藤くんのことが嫌いじゃなくて……



好き。



に、なりかけてるんじゃないかなって。




「嫌いだったはずなんだけどなぁ……」



「へぇ。なるほど。ゆなのためにあたしがいいこと教えてあげよっか」



肩にポンと姉の手が乗る。


いったいなんだろうか。



「人間っていうのは好きとか嫌いとか曖昧なもんなの。たった1日でも嫌いな人が好きになったり、また逆もそう。コロッと変わっちゃうのね。それはおかしいことじゃない。当たり前のことなの。だからさーー」





白い歯を見せて姉は笑った。




「今の気持ちは本物だよってこと! 素直になれ! ゆなはたぶんその子のことが好きなんだよ!」