「そんなわけ」
「ある。一緒なんだよ」
声のトーンが低くなる。
前を向いていて顔が見えない。
けどピリッと肌で感じた。
何かが違うってことを。
「怖いよ。なんか」
「怖いか。あははっ、いっつもふざけてると思ったら大間違いってことかなっ」
くるりと反転していつもの笑顔。
どうやら勘違いだったらしい。
「じゃ、私そろそろ家に着くから」
気づけば家まであとちょっとだ。
一人でとぼとぼ歩いてると遠いなって思うけど、なぜか藤くんが付いてくると短く感じる。
他の人だとこうはならないだろう。
藤くんだからだ。
「家まで送ろうか?」
「ううん。家を知られてそこで張り込まれても困るからいいや」
「ストーカーじゃないしそんなことはしないって」
ちょっと不機嫌そうな顔をする。
「そうだといいけど」
私は小さく手を振って藤くんと別れた。


