私はとりあえず藤くんと距離を取ってから人差し指を向けて怒鳴った。
「友達じゃない! 好きでもない! 絶対好きにならない!」
「んん? そこまで言わなくても」
「うっさい! ええっと……ハゲ!」
暴言が見当たらなかったからとりあえず出てきた単語を言って教室を出た。
廊下に出て周りを見渡す。
まだ私たち以外に人がいなくて、一安心した。
そして藤くんが追ってこないのを確認して女子トイレの個室にこもることにした。
頭をかかえて丸くなる。
完全に藤くんのペースにはまっている。
屈辱だ。
あんな顔を近づけてくる奴なんか思いっきりビンタしてやればよかったんだ。
なのにできなかった。
ドキッとしてしまった。しかも昨日今日でたった2日間、話しただけの藤くんに。
「腹立つ……」
自分に。
「藤くんのこと嫌いなくせに……」
これじゃあまるで私が。
ほんの少しでも。数センチでも。
いや、数ミリでも。
惚れちゃったみたいじゃん。


