藤くんはいつもわらってる




トーストを口に詰め、無理やり飲み込んでカーテンレールに干してある体操服をハンガーからとってそそくさと二階に上がる。


自分でも分からないけどなぜか制服に着替えて体操服を鞄に突っ込み、家を出た。


いつもより20分も早い。


けど、あのまま家にいてお母さんにバレるよりかは全然マシだった。




学校につくと、あんまり人がいなかった。


いつも朝早くからやっている野球部も今日は休みなのか校庭が閑散としている。


暑苦しい人達がいないからか、照りつける太陽もそこまでうっとうしくない。


靴を履き替えて教室に行くと私一人だけだった。


そういえば、このクラスは遅刻寸前のところで人が押し寄せてくるんだっけ。


「んん、静かでいい」


私は席に座ってぐっと体を伸ばした。


このゆったり感、まるで家みたい。


いや、今はここの方が居心地がいい。


……藤くんがこっそりいるのを除けば。