「根拠は?」
「そんなのないよ」
「じゃあさ。みんなにかわいいかわいいって言ってる?」
藤くんは照れくさそうにする。
「いや、ゆなだけ……ん? そうかもしれない」
「なにそれ。そこは言ってないよっていう場面でしょう?」
つい。気を許してしまった。
クスッと笑みがこぼれた。
久しぶりに自然に笑ったんじゃないだろうか。
しかもよりによって藤くんのおかげで。
「……なにそれ」
ん? 何か言った?
ボソッと呟いたかと思えば、今度はいきなり私の手を握ってきて、目をキラキラさせて、
「なにそれ、反則だ! ゆな、もう一度笑ってくれ!」
と、なぜか興奮していた。
なにが反則なんだろうか。
というか笑ってくれと言われて笑いたくない。恥ずかしいし。
私は首を横に振った。
「無理。できない。ていうか安易に私にべたべた触れないでよ」
振り解くと、藤くんは少し残念そうにしていた。ちょっとだけ心が痛んだ。
……ってなんで心が痛んでんの? 私は藤くんの事が嫌いなはずなんだ。
そうだ。
嫌いなんだ。
「やっぱ私、藤くんのこと嫌い」
口を抑える。
言っちゃった……。
つい、言葉に出してしまった。


