窓辺に近寄り、空を見上げる。 月を見て考えるのは、昼間のこと。 「今日も街はよかったわ。」 活気のある市、踊る若者。 色とりどりの店に、おしゃべりする女性。 そして、手をつないで歩く恋人たち。 イザリナはフードで顔を隠しながら歩いていたが、二人の幸せな気持ちは見ているだけで伝わってきた。 「私にとっては、夢のまた夢ね…」 一ヶ月後の夜会でも、実際はナキヤとお父様が二、三人に絞った中から選ぶことになるだろう。 富と権力があり、セルタリア王国と親密な国の王子。