朔の車の助手席に乗る。
ほんの少しだけ・・・
この状態に慣れてきたなと
陽和は思っていた。
「だいぶ・・
しっくりくるように・・なった?
ここに座るの。」
「あ・・・うん。」
そういうと,陽和は
少し笑った。
「俺も・・。
女性が助手席に乗ってるって
初めての・・・ことだし。
それがあこがれの陽和・・
なんだもんな・・・
まだ・・俺は
緊張する・・・けど。」
「・・・うん・・・。
私も・・・緊張は・・・
してるよ・・。」
そういって,二人で
苦笑した。
「あのさ・・・
俺・・ホントに・・・
恋愛経験って・・無くて・・・。
恥ずかしいんだけど・・・。」
「あ・・・あの・・・
そ・・それは・・私も・・。」
「いや・・ホントに・・だよ?
俺・・・中学生レベル・・
・・・の恋愛経験のなさ・・
だから・・・・
なんか・・いろいろと
スマートにできなかったら
ごめん・・な?」
そういって赤い顔をして笑う
朔は・・・小学生の頃と
同じ目をしていた。
「私も・・・よ・・・。
何もかも・・・
朔ちゃんとが・・・
はじ・・めて・・。
・・・・・・あ・・。」
「え!!あ・・・。」
陽和が思わず言った言葉に
深い意味はなかったのだけれど
発した後に気が付いて
二人は目をそらした。
「も・・もう・・・
そんなこと・・突然
言われたら・・・
事故っちゃう・・・から・・。」
「え・・・?あ・・。」
朔が言った言葉で二人は
また少し笑った。
「そういや・・・陽和・・・
あのさ・・・
一つ・・・ひっかかって
いたことが・・・
・・あるんだけど・・・。」
朔はそう切り出した。
あの日の「あの」男性のこと。
どうしても・・・
ひっかかる・・・。
だけど,今の陽和の様子を
見ていたら・・・
・・・恋人だったとは
思えないんだけど。
「いつかさ・・・
園に・・
黒い車・・・で・・
陽和を迎えに来たのって・・・。」
「え・・?」
陽和は思い起こしていた。
私を迎えに来るなんて・・誰だろう?
「あ・・もしかして・・・。」
黒い車と言われて
陽和はある人物のことが思い浮かんだ。
「蓮ちゃん・・・かな・・・?」
「蓮ちゃん?」
陽和が親し気にそう告げたことに
朔は少し怪訝な顔をした。
「あの・・・いとこ・・・。」
「いとこ!?」
朔は思いもしなかった答えに
呆然としていた。
「うん・・あの日,
ちょうどおばあちゃんが
大腿骨骨折してしまって・・・。
手術だったからすぐに
お見舞いにって・・・。」
「あ・・・はあ・・
そ・・それで・・・。」
「朔ちゃん・・・それ・・
見てたの?」
「あ・・・うん・・・。」
朔はまた,
格好悪い自分を見せてしまったと
ばつが悪そうな顔をした。
「朔ちゃん・・・。
もしかして・・・
やきもち・・・焼いて
くれたの?」
「・・・いや・・
やきもちなんて・・・
ものじゃない・・よ・・
あのころ・・
なんとか・・陽和に
声をかけてみたいなって
気持ちと・・・
陽和・・・さ・・・
か・・かわいいから・・・
恋人・・いるだろうなって・・
思ってて・・・。
だから・・・あ・・の・・
男性と仲良さそうに
出てきたから・・・
あきらめようって・・
あの時思って・・・その・・
失恋しちゃったなって
思ってたんだけど・・・。」
朔は言葉にすればするほど
自分の行動の格好悪さが
際立って感じた。
「え・・・あ・・・。
朔ちゃん・・・。」
陽和は驚いていた。
あの時点で,
朔が自分のことを
そこまで思っていてくれたなんて。
「俺・・・
自分に自信がないんだよ。
殊,陽和に関しては・・・。」
「・・・朔ちゃん。」
朔の切なそうな顔に
陽和は息をのんだ。
「結局,誤解だったんだけどさ・・
でも,陽和には
ふられたって思ってたし。
それは・・・今でも
・・不安だよ。
俺は陽和にふさわしい男に
なれるんだろうか・・・って
思うし。
由宇のことを
陽和にも背負わせてしまって
いいのかなって思うし。
それに・・・。」
陽和はその言葉に
首をふりながら応える。
「・・・それに・・・?」
「ずっとずっと
恋い焦がれていた女の子が・・さ・・
想像の30倍くらい
美しくて,かわいくて,
でも凛とした強さもあって・・・
そんなすごい女性になって
現れたときの気持ち・・
陽和にはわからないだろう?」
そういって朔は顔を
真っ赤にしながらも
陽和への思いを
冗談交じりに告白した。
「あ・・え・・・っと・・・
他の人はわからないかも
しれないけど・・・。」
「けど・・・?」
「・・・私にはわかるよ。
・・だって・・・
朔ちゃんだって・・・
そうだもん。
子どものころから
ずっと憧れのヒーロー
だったけど・・・
やさしくて強くて・・
・・でもそれだけじゃなくて
今は・・私に・・
弱いところも・・・
見せてくれて・・・
やっぱり私には
朔ちゃんしかいないんだって
思い知らされた・・・から。」
「・・陽和。」
話をしている間に
陽和のアパートの前に到着した。
すっかり熱くなってしまった
車の中の空気を
少し惜しむように
2人は車の外に出た。
「今日も・・・ありがとう。」
「いや・・こちらこそ。
・・・会えて・・・
うれしかった。」
「・・・うん・・
私も・・・。」
「・・・じゃ・・あ・・
おやすみ。」
「あ・・うん。
おやすみなさい。」
陽和がそういうと
朔は一瞬動作を止めて
陽和を見つめた。
「朔ちゃん?」
そういって40センチほど
高い朔を陽和が見上げると
朔は困ったように
眉毛を下げて陽和を見つめる。
そして・・・陽和の肩を
グッと抱き寄せて
小柄な陽和をスポッと
覆うようにして
陽和を抱きしめた。
「・・・ごめん・・・
陽和があまりにかわいくて
我慢できなかった。」
そういって優しく抱きしめる
朔の手は震えていた。
「・・・朔ちゃん・・。」
その温かさに
陽和は・・・・
溶けてしまいそうな
気持ちがした。
「おやすみ,陽和。
今日は,ちゃんと
寝て・・な。」
そういうと,陽和の
頭をポンと撫でて
朔は車に乗り込んだ。
陽和は手を振るのも
忘れて呆然としていた。
まだ・・・朔のぬくもりが
体を纏っていた。
ほんの少しだけ・・・
この状態に慣れてきたなと
陽和は思っていた。
「だいぶ・・
しっくりくるように・・なった?
ここに座るの。」
「あ・・・うん。」
そういうと,陽和は
少し笑った。
「俺も・・。
女性が助手席に乗ってるって
初めての・・・ことだし。
それがあこがれの陽和・・
なんだもんな・・・
まだ・・俺は
緊張する・・・けど。」
「・・・うん・・・。
私も・・・緊張は・・・
してるよ・・。」
そういって,二人で
苦笑した。
「あのさ・・・
俺・・ホントに・・・
恋愛経験って・・無くて・・・。
恥ずかしいんだけど・・・。」
「あ・・・あの・・・
そ・・それは・・私も・・。」
「いや・・ホントに・・だよ?
俺・・・中学生レベル・・
・・・の恋愛経験のなさ・・
だから・・・・
なんか・・いろいろと
スマートにできなかったら
ごめん・・な?」
そういって赤い顔をして笑う
朔は・・・小学生の頃と
同じ目をしていた。
「私も・・・よ・・・。
何もかも・・・
朔ちゃんとが・・・
はじ・・めて・・。
・・・・・・あ・・。」
「え!!あ・・・。」
陽和が思わず言った言葉に
深い意味はなかったのだけれど
発した後に気が付いて
二人は目をそらした。
「も・・もう・・・
そんなこと・・突然
言われたら・・・
事故っちゃう・・・から・・。」
「え・・・?あ・・。」
朔が言った言葉で二人は
また少し笑った。
「そういや・・・陽和・・・
あのさ・・・
一つ・・・ひっかかって
いたことが・・・
・・あるんだけど・・・。」
朔はそう切り出した。
あの日の「あの」男性のこと。
どうしても・・・
ひっかかる・・・。
だけど,今の陽和の様子を
見ていたら・・・
・・・恋人だったとは
思えないんだけど。
「いつかさ・・・
園に・・
黒い車・・・で・・
陽和を迎えに来たのって・・・。」
「え・・?」
陽和は思い起こしていた。
私を迎えに来るなんて・・誰だろう?
「あ・・もしかして・・・。」
黒い車と言われて
陽和はある人物のことが思い浮かんだ。
「蓮ちゃん・・・かな・・・?」
「蓮ちゃん?」
陽和が親し気にそう告げたことに
朔は少し怪訝な顔をした。
「あの・・・いとこ・・・。」
「いとこ!?」
朔は思いもしなかった答えに
呆然としていた。
「うん・・あの日,
ちょうどおばあちゃんが
大腿骨骨折してしまって・・・。
手術だったからすぐに
お見舞いにって・・・。」
「あ・・・はあ・・
そ・・それで・・・。」
「朔ちゃん・・・それ・・
見てたの?」
「あ・・・うん・・・。」
朔はまた,
格好悪い自分を見せてしまったと
ばつが悪そうな顔をした。
「朔ちゃん・・・。
もしかして・・・
やきもち・・・焼いて
くれたの?」
「・・・いや・・
やきもちなんて・・・
ものじゃない・・よ・・
あのころ・・
なんとか・・陽和に
声をかけてみたいなって
気持ちと・・・
陽和・・・さ・・・
か・・かわいいから・・・
恋人・・いるだろうなって・・
思ってて・・・。
だから・・・あ・・の・・
男性と仲良さそうに
出てきたから・・・
あきらめようって・・
あの時思って・・・その・・
失恋しちゃったなって
思ってたんだけど・・・。」
朔は言葉にすればするほど
自分の行動の格好悪さが
際立って感じた。
「え・・・あ・・・。
朔ちゃん・・・。」
陽和は驚いていた。
あの時点で,
朔が自分のことを
そこまで思っていてくれたなんて。
「俺・・・
自分に自信がないんだよ。
殊,陽和に関しては・・・。」
「・・・朔ちゃん。」
朔の切なそうな顔に
陽和は息をのんだ。
「結局,誤解だったんだけどさ・・
でも,陽和には
ふられたって思ってたし。
それは・・・今でも
・・不安だよ。
俺は陽和にふさわしい男に
なれるんだろうか・・・って
思うし。
由宇のことを
陽和にも背負わせてしまって
いいのかなって思うし。
それに・・・。」
陽和はその言葉に
首をふりながら応える。
「・・・それに・・・?」
「ずっとずっと
恋い焦がれていた女の子が・・さ・・
想像の30倍くらい
美しくて,かわいくて,
でも凛とした強さもあって・・・
そんなすごい女性になって
現れたときの気持ち・・
陽和にはわからないだろう?」
そういって朔は顔を
真っ赤にしながらも
陽和への思いを
冗談交じりに告白した。
「あ・・え・・・っと・・・
他の人はわからないかも
しれないけど・・・。」
「けど・・・?」
「・・・私にはわかるよ。
・・だって・・・
朔ちゃんだって・・・
そうだもん。
子どものころから
ずっと憧れのヒーロー
だったけど・・・
やさしくて強くて・・
・・でもそれだけじゃなくて
今は・・私に・・
弱いところも・・・
見せてくれて・・・
やっぱり私には
朔ちゃんしかいないんだって
思い知らされた・・・から。」
「・・陽和。」
話をしている間に
陽和のアパートの前に到着した。
すっかり熱くなってしまった
車の中の空気を
少し惜しむように
2人は車の外に出た。
「今日も・・・ありがとう。」
「いや・・こちらこそ。
・・・会えて・・・
うれしかった。」
「・・・うん・・
私も・・・。」
「・・・じゃ・・あ・・
おやすみ。」
「あ・・うん。
おやすみなさい。」
陽和がそういうと
朔は一瞬動作を止めて
陽和を見つめた。
「朔ちゃん?」
そういって40センチほど
高い朔を陽和が見上げると
朔は困ったように
眉毛を下げて陽和を見つめる。
そして・・・陽和の肩を
グッと抱き寄せて
小柄な陽和をスポッと
覆うようにして
陽和を抱きしめた。
「・・・ごめん・・・
陽和があまりにかわいくて
我慢できなかった。」
そういって優しく抱きしめる
朔の手は震えていた。
「・・・朔ちゃん・・。」
その温かさに
陽和は・・・・
溶けてしまいそうな
気持ちがした。
「おやすみ,陽和。
今日は,ちゃんと
寝て・・な。」
そういうと,陽和の
頭をポンと撫でて
朔は車に乗り込んだ。
陽和は手を振るのも
忘れて呆然としていた。
まだ・・・朔のぬくもりが
体を纏っていた。
