美咲と別れた朔は,
はずむような足取りで
家路に急いだ。

 陽和…喜んで…
 くれるだろうか…

楽しみと,ちょっとだけ不安な
気持ちと…複雑な思いを
抱えながら…
朔はこれまでにない高揚感を
味わっていた。

 陽和…どんな顔…
 するかな…

陽和の顔を思い浮かべると
ついつい顔が緩んでしまう。

そんなことを思い浮かべながら
街を出て駅の方へ
小さな路地を歩いていると
見たことのある後ろ姿を見かけた。

「あ…橘…」

自転車に乗っていたのは,
担任をしている生徒の橘だった。
心なしか,力ない恰好で
自転車をこいでいた。

少し心配になって,
朔が駆け寄ろうとしたとき
大きなトラックがスピードを
出して駆け抜ける。

「先生…」

橘が気が付いて,
ふっと朔の方を見て
よろけたとき,
ちょうどトラックが…




「危ないっ!!」









ドンッ!!!!