「ねえ,早く早く!」

「ちょっと,待って~!」

今日も,由宇と朔,
陽和は,3人で
休日を過ごしている。

今日は,由宇にねだられて
プラネタリウムに
来ていた。

由宇は,父親の影響なのか,
宇宙や星に強い興味を
示していた。

張り切って,チケット売り場へと
急ぐ姿は,以前よりも
どことなく,子どもらしく
無邪気な様子に見えた。

「ホント,やっぱ,
 血は争えないって
 いうか…」

「え…?」

「好きだったんだよな,
 兄さんも。
 プラネタリウム…とか」

「へえ…そうなんだ…」

「俺は全く興味なかったけどな」

「…確かに,朔ちゃんから,
 そんな話,聞いたこと
 あんまりなかったね~」

そういうと,朔は
ニコッと笑ってつぶやく。

「そう,俺が子どものころ
 興味があったのは,
 もっぱら,サッカーと
 陽和だけだったから」

「…え…も…もう」

陽和が少し赤い顔をするので
朔はたまらなくなって,
頬にキスをする。

「も…もう,朔ちゃん,
 …外…だから…」

朔はニコッと笑って
由宇を追いかけて行った。


プラネタリウムに入ると,
由宇は目を爛々と輝かせて
その浮かび上がる「宇宙」に
見惚れていた。

陽和も,プラネタリウムなんて
久々に来たけれど,
なかなか幻想的でいいものだ
なあと思っていた。


「あー,楽しかった!」

嬉しそうな由宇の様子に,
朔は満足げだった。

「なかなか,いいもんだなあ,
 たまにはこういうのも」

「うん,ホントねえ」

陽和は朔と目を見合わせて
笑っていた。

突然,朔は思いついたように
由宇に話しかける。

「なあ,由宇?
 お前さあ,本物の星,
 見たくないか?」

「え?本物?」

「ああ!
 空気がきれいでさ,
 星がよく見えるところ,
 行ってみたくないか?」

「うん!!
 行ってみたい!!」

「陽和は…どう…?」

朔は陽和の方をそっと見て
聞く。

「え…私…も?」

「ああ!」

「そ…それって…」

「ちょっと寒いかもしれないけど,
 冬の夜空って…きれいだから。

 天文台があるところに
 旅行…しないか?」

由宇は目をキラキラと
輝かせていた。

陽和も…そんな2人の様子を見て,
朔の案に賛成した。

朔はこの時,
二人には,まだ
伝えていなかったけれど
この旅行に,大きな覚悟を
持って臨もうとしていた。