朔は朔で,
今日は,由宇を連れて
公ちゃんのアパートを
訪れていた。

「まあまあ,お幸せそうで」

「そうかあ?
 そんな風に見えるか?
 まあ,そうなんだけど~」

そういってニコニコ笑っている
朔の顔は緩みっぱなしだった。

「ったく…
 こっちがどれだけ
 心配したことか。

 全く不器用なんだからなあ…
 朔ちゃんは」

「ホントホント」

佑里香も笑いながらそう言う。

「ホント…
 ありがと。
 公ちゃんと佑里ちゃんの
 おかげ…ホント
 ありがとう」

朔が本気でそう言うから
公ちゃんと佑里香は
目を合わせて笑った。

「で…進展…は?」

「え…いや…
 まだ…そんな…
 何もないけど…

 あ…でも,この間,
 うちにきて,
 夕飯を…」

「へえ…なんだ…
 奥手の二人だから
 どうなるかと思ったけど
 なかなか…ちゃんと
 やってるじゃんか。

 じゃあ,もう
 ラブラブだなあ?」

「は…なんだよそれ…」

朔は照れた声で
そう答えると…

「うん,らぶらぶだよ」

すかさず,由宇が答えた。

「だってねえ,
 さくちゃん,
 ひよりせんせいのこと,
 『だいすき』って
 いってたもん」

「はあ?まじで?」

「もう,やめろよ,由宇」

ニヤニヤと笑う公ちゃん。
朔は真っ赤な顔で
由宇の口を押える。

「お前ねえ…
 由宇ちゃんの前で
 イチャイチャするのは
 やめろよ…」

「ちがっ…
 あれは…由宇が
 ふったんだから…」

そんな朔の様子を見て
3人は幸せそうに笑った。

「まあ,でも…
 よかったよな…

 ひーちゃん…
 ずっと朔ちゃんのこと
 好きだったみたいだしな」

「え…あ…
 ああ…なんか…
 そうやって…
 言ってくれたよ…」

「え…ああ…そうか。
 朔ちゃんも…だろ?」

「ああ…
 …長い…片思いだった…
 なあ…」

「片思いじゃ…
 なかったんだろ?」

「…あ…ああ…そう
 …だなあ…

 こんなことなら…
 もっと早く…
 ちゃんと…伝えて
 おけばよかったかもな…

 だけど…
 俺は……
 これまで…陽和を
 傷つけてきた分…
 …ううん…その何倍も…
 幸せに…するつもりだから…

 …絶対に…」

「…うん,そうだな。
 もう…離すようなことが
 あったら,俺が
 許さないから…」

そう笑った公ちゃんの顔は
まるで…小学生の頃に
戻ったように…見えた。