私が大学を卒業して、地元の小さなメーカー会社に就職したのが、今からおおよそ2年前。





大学時代散々ぬるま湯に使っていた私の生活は、6時起き、8時出社、8時帰宅というなんともコメントし辛い普通の生活リズムに正された。





それでも当時の私は、朝がツラいだの、残業が多いだの、給料が少ないだの、文句を言うことが仕事みたいな人間だったと思う。





もちろんそれを口に出していたわけではないけれど、態度には引くほどしっかりと出ていたんだろう。





“冗談じゃない。こんな安月給のつまんない企業、なんで選んじゃったんだろう”





そんな私の空気を知ってか知らずか、会社の上司や先輩には、あの時は尋常じゃないペースで怒られっぱなしだったのだけど。






てんで甘ちゃんだったあの頃の私は、数人しかいない同期の前で怒られる恥ずかしさと謎の反抗心で、心の中ではかなりの勢いでキレていた。





“あんなミス、誰でもするミスじゃん。昨日別の子がやったときはこんなに怒ってなかったクセに”





と、会社に対する不満を内心に抱えたまま、入社して3ヶ月経った7月の半ば、金曜日。





退勤間際の凡ミスで、課長にこれでもかというくらい叱られた私。





ようやく帰れる、ようやく週末だ、と、うきうきしていたところに、覚えず課長の特大カミナリ。




言うまでもなく、私のテンションはフリーフォールよろしく急降下。高低差がある分落下スピードもすさまじい。




“……はァ”




心の中ですら喋る言葉が見つからず、私はがっくりと肩を落としたまま、帰りの電車にふらりと乗り込んだ。




──それが、今からおおよそ2年前の話で。




界人と再会するより、ちょっと前の話。