「……」





界人の右手が、少しだけ、ためらいがちに、私の左腕を引き寄せた。






抗わずに、少しだけ身を寄せた。





「美和?」

「うん」





「あのさ、俺、頑張るよ。とにかく、前に進んでみる」

「うん」






「でさ…あの」

「うん」





「進んで、ちょっとしたら…会いに行っていい?」

「……」





彼の言葉の全部の意味は、この時の私には知る由もない。





けれども、彼の声色が、私の身体に伝わる彼の体温が、私の手を握る彼の手の力強さが、色々なことを私に伝えてくれた。





1秒と間を置かず、私はコクンと頷いた。





そうしたら界人は1度「ふふっ」と笑って、さっきの曲を「界人」のまま、口ずさみだした。





私はそれを世界一贅沢な子守唄にして、





界人の腕の中、心地良いまどろみへ、沈んでいった。