「klang」のボーカルは、写真に写っていたあの女の子、「Lilha」であるはずで、そうだとすれば「kaito」は本来歌う役目にはない。





それがもったいないと思うほど、「kaito」の甘く透き通った声色は、私の心を優しく掴み、それきり決して離してくれなくなった。





アンプを通さない、エレキギターの微かな音色が、ゆったりしたスローテンポで耳に心地良いコードを鳴らす。





それに合わせて「kaito」はでたらめな英語をあてながら、優しく、語りかけるようにメロディーを口ずさむ。





耳元で「kaito」の歌声。それを部屋ごと包みこむような、ギターのサウンド。外の雨音さえも小粋なパーカッションとなって、真っ暗な部屋がにわかにライブ会場と化す。





「kaito」のソロライブなんて、本当は私の想像が及びもつかないほど、恐ろしく贅沢な体験なのだろう。しかも無料の、特等席だ。





“これが、「kaito」なんだ”






「kaito」の優しげな歌声と、ギターの音色。それに合わせて動く彼の腕の振動を間近で感じながら、私はしばし筆舌に尽くし難い幸福に、頭から足先まで浸りきった。