少し大きめのグレーのスウェットは、いかにも“ありあわせ”といった感じで。





両腕と両足の裾を何度か折り曲げて、ようやく私の身体のサイズと合致する。多分界人にとってもやや大きいのでは、とも思ったのだけれど、部屋着として使う分には、これくらいのゆったり加減の方が過ごしやすいのは自明の理だ。





袖を随分余らせた界人のスウェット姿を想像すると、恐ろしいほどしっくりくる。





「コーヒー、温まってるよ」





私がリビングに戻ると、コタツに入った界人がこちらを振り向き、にこりと笑う。





「ありがと」

「俺もシャワー浴びてくる。風邪ひきそう」





わざとらしく自分の身体を震わせて、界人がおどけてみせた。耳のピアスがキラリと光って、彼の笑顔の眩しさを一層際立たせる。





「マンガとか読んでていい?」

「うん。適当にくつろいでて」





コタツを立った界人が、私とすれ違いざまにもう一度笑い、白い本棚を指差した。





「『I've seen you』。オススメ」

「オッケー」





──パタンとドアが閉まって、また一人きりになった。