──そのせいだったのかどうかはこの際置いておくとして。






私はなんの勢いだったのか、なんの考えもなしだったのか。






「まぁ、いいや。雨やまなそうだし、界人ん家泊めて」





と、今思い出すと相当に大胆な爆弾発言を界人に叩き込んだのだ。





「………え」





界人の凍りつき方といったら、それはもう、彼の頭をポコンと叩いたらそのままバラバラになってしまいそうなくらい、見事にカチーンと固まってしまって。





──よく考えれば20そこそこの若い男女が雨宿りに片方の家に…なんて、これみよがしに分かり易いいわゆる「フラグ」というやつなのかもしれないけれど。




私ときたら界人の身近さをこじらせて、そんなベタなシチュエーションの持つ重大な意味たるものに、本当に、これっぽっちも、1ミクロンも思いを馳せていなかったわけで。




「ん、なに。部屋散らかってんの?」





などと、言うに事欠いて弟の涼太に叩くような軽口を平然と叩き。





「い、イヤ…そういうわけでは」




ようやく我に返り弁解しようとする界人に向かって、





「片付ける間くらい外で待ってるから。ヨシ、早く行こ」





と、有無を言わさぬ強引さで、私は素早く席を立ち、カバンからペタンコの財布を取り出した。





「あ、そうだ。お代いくら?」





そう言って界人の引きつった顔を見ると、瞬間もう一度大きく雷鳴が轟いて、雨音が一層大きくなった。






今思うと、アレは界人の心情をすごく如実に表したタイミングだったなぁ、と。






今になってふと、そう思う。