私には分かった。


その逆説の言葉から次へと繋がる言葉を容易に想像することができた。


「俺は教師だから……生徒のことは恋愛対象には思えない。だから、ごめん」


先生は私に向かって頭を下げた。


「わ、わかってますよ!なんか変なこと言ってすみません。そうですよね」




「あ、でもこれで"ケータイ小説倶楽部"辞めるとか言わないで下さいね!私、小説の書き方、もっと先生に教えてもらいたいんで」


「……そうだな」


「……はい」


ほんの少しの間、2人の間に沈黙が訪れる。


「椎名、ありがとう」


「………」


「そろそろ帰ろっか。家まで送ってくから」



それから私たちはまた駐車場まで戻り、先生は私を家まで送ってくれた。


車内では私が道案内をする以外に先生は話さなかったし、私も言葉を発しなかった。


車窓から見えた景色はさっきとは打って変わって真っ暗だった。


それを見ていると悲しい気持ちがぐっと込み上げてきて涙が溢れそうになったけど、下唇を噛みながらグッと堪えた。


大丈夫。


どうってことはない。


大丈夫。大丈夫だ。


こんなところで泣きたくない。


ここで泣いたらまた子どもだと思われてしまう。


そう思うと涙は絶対に流せなかった。