恋愛ケータイ小説倶楽部

「つっても流石に8時過ぎたらまずいからな。あと少しだけ待ってみよ」


先生は左腕につけている腕時計で時間を確認しながらそう言い、柔らかく微笑んだ。


うちは門限とかそんなものないけれど、さすがに高校生だからと思って先生はきっと気遣ってくれてるんだ。


そう思うと、なんだか少し距離を感じて悲しい気持ちになった。


「……早く大人になりたい」


ボソッと漏れてしまったその言葉はあっと思った時にはもう遅くて、先生の耳に届いた後だった。


「……そう?俺は高校生に戻りたいよ」


そう言った先生が私を見つめ、視線が交わった。


その時一瞬。


先生は私と同じように思ってくれているのではないかとつまらない錯覚を起こしてしまった。


私が思っているのと同じように……


同じ立場で出会いたかったと思ってくれているのではないのだろうかと思ってしまった。


ーーでも本当にそれはただの錯覚。


きっと……先生は私の気持ちなんて気づいていないんだろう。