赤面症男子の憂鬱



馬曽くんは私に断られてバツが悪いのか、ものすごく気まずそうだ。


どうしたらいいものか、もう一度考える。



(……あ
良いこと思いついた)



「ねえ、馬曽くんって○○駅の電車使う?」


「え、あ、うん」


「馬曽くんが困らないなら駅まで傘に入れていってくれないかな?」



我ながら、ちょっと図々しいお願い。

いわゆる相合傘だし、嫌な人は嫌だろうから確認を取ってみる。


すると馬曽くんは、信じられないとでも言うように驚いた顔をした。


ここまで女の子苦手なんだし、流石に難しいかな?


「あ、無理だったら良いんだ
私走って帰るし……」


言葉を繋げる私に被せるかのように、馬曽くんは比較的大きな声で言った。


「い、や、べつに無理じゃ無いから……!!」


腕をブンブンと顔の前で振りながらそう言ってくれるが、表情はまるで平気に見えない。


(顔、真っ赤だけど……大丈夫なのかな?)


でもまあ、良いと言ってくれて居るんだし厚意には甘えさせて頂こう。



「えっとじゃあ、お願いしてもいいかな」


警戒させないように笑顔になり、私は馬曽くんに歩み寄る。


馬曽くんはというと……後ずさりそうな勢いだ。


傘を貸そうとししてくれたくらいだし、嫌われてるとは思わないけど……
ここまで慌てられると、悪いことをしているような気持ちになる。


「あの、無理しないでね……?」


「し、して、ない……」


そう言って、馬曽くんは玄関先に出て傘をさす。

そして、俯きながら私のことを待っている。


下を向いて黙っているせいで表情がイマイチ良くわからないけど、お邪魔させてもらおう。


私は遠慮がちに馬曽くんの横に入り、ぴったりと肩を並べた。

ちらっと横を見上げると……



(わ……っ
すごい汗!
それに耳真っ赤……)

しかも心なしか震えている。



「ほ、本当に大丈夫……?」


「へ、……き」


どんどん元気が無くなっている気がする。


そして、私たちはなんとか歩き出した。


お互いに歩幅を合わせようと、少しゆっくりになってしまう。


ボトボトとうるさい雨音のせいもあり、あまり会話は弾みそうに無い。




それにしても、馬曽くんってもっとクールなイメージがあった。

こうなんていうか、女子を寄せ付けないオーラというか……。


でも実際は優しいし、しかも赤面症。

なんか、思っていたより可愛くて……むしろ女の子みたい。



「ふふ、助かったな
馬曽くんありがと」


彼の方を見ながらお礼を言うと、案の定目を逸らされた。

でも、雨音の中から微かに『うん』と聞こえて安心する。


嫌がられてはいないみたいだし、せっかくだから無理させない程度にいろいろ話しかけてみようかな。