電話を保留にしたまま、席を移動する。
芹沢くんの机の前に立つと、椅子を引いて腰掛けた。
引き出しの二段目を開いてみたけど、きちんと整理されたその中にお財布は見当たらない
保留を解除して、芹沢くんのデスクにある電話をとる
「お待たせ。それらしいもの、ないよ?」
「おかしいな…」
電話口から聞こえる声に重なるように、オフィスの入り口から生の芹沢くんの声が響いた
「わっ、びっくりした」
「そんな驚くほどじゃないだろ」
プツリと受話器のほうは会話が途切れて、ゆっくりと芹沢くんはこっちに向かって歩いてくる
「ないよ、お財布」
「うーん、そんなはずないんだけど」
太鼓をドンドン叩いてるくらい、心拍数が上がっているのがわかる
そんな私の隣までやってきた芹沢くんは、前かがみになって引き出しをひいた
距離が、近い

