静まり返った、21時。
残業といっても、深夜までかかることはなく、残務処理にもひと段落したその瞬間。
外線ランプが点滅し、大きく電話の音が鳴り響いた
ビクッと身体が跳ね上がる
業務時間外に電話が鳴ることがほとんどないからだ
「お世話になっております、フレームワークです」
「お疲れ様です、芹沢です。…朝比奈?」
「お疲れ様、どうかした?」
電話は芹沢くんだった
「財布を忘れて、鍵がなくて。朝比奈がいて良かった、まだいる?」
「もう帰ろうとしてたところ。鍵、開けておくよ」
「いや、いい。すぐに着くからそのままいて」
私は椅子を回転させると、芹沢くんのデスクに視線を向けた
一目みて財布のようなものは見当たらない
「お財布、何処に置いたの?」
「たぶん、二段目の引き出し」
「ちょっと待ってね」

